BBCのペルーに関する記事を読んだ。
タイトルは「ペルーにおけるコロナウイスル:なぜ大きな経済成長を成し遂げた国が医療システムにさらに投資してこなかったのか」(2020年6月)。
ブラジルほど報道されていないので目立たないが、ペルーはCovid-19の人口当たりの死者数が世界一だ(人口10万人以上の国で)。すでに千人に一人の割合で亡くなっており、妻が勤めている会社でもペルー人の同僚2人の訃報があった。
上記の記事は、順調に経済成長していたペルーが、これまでちゃんと医療・衛生分野に投資してきたのかを検証しようというもの。確かに気になる問いかけだ。
ペルーでは3月のロックダウン開始後、すごい勢いで感染者が増えていき、この半年ほどずっと「大規模なクラスターが発生」「病院のベッドが足りず廊下に患者があふれている」「酸素が不足して治療に支障」などの悪いニュースばかりが続いてきた。日本と比べると、人口当たりの病床数は10分の1程度しかない。
記事によると、ペルーはこの20年、鉱物資源の価格上昇などによって年平均4.9パーセントの経済成長をしてきた。2008年には成長率が9パーセントを超え、「国際機関の廊下の立ち話ではペルーが『rising star』として話題にのぼっていた」らしい。
ところが経済成長をしてきた割には、医療・公衆衛生には重点が置かれず、それほど予算が割かれてきたわけではないようだ。
ペルーの医療・衛生への公的支出は、多い年でも対GDP比で3.2パーセントほど。確かに他のラテンアメリカ諸国と比べると低い。
多くの国は4パーセント台だし、キューバにいたっては10.6パーセント(さすが)。
ペルーの下を見ると、ホンジュラス、ドミニカ共和国、グアテマラ、ベネズエラ、ハイチと、メキシコを除いて経済的に苦しんでいる国々だ。
そして世界トップの国々を見てみると、上からツバル12.5%、キューバ10.5%、スウェーデン9.2%、日本9.2%となっている(2017年)。
こう見ると確かにペルーでは医療・衛生部門は後回しにされてきた課題だったようだ。
だが、肝心の「なぜペルーは医療・衛生分野に多くを投資してこなかったのか」という問いかけは、記事ではあまり明確に説明されていなかった。
専門家の話として、
・「行政の非効率や汚職によって多くの資金が失われた」
・「医療制度内に既得権益があり、変化に抵抗してきた」
・「地方政府は予算があっても実行にうつす能力がなかった」
というざっくりした説明はあったものの、具体的な例が挙げられていなかったのは残念だった。
まあ大枠では、ペルーで長年続いてきたフジモリ派vs反フジモリ派の闘争に多くの政治リソースが割かれて、国民の健康は後回しにされてきたということなのだろう。
ずっと続いてきた劇場型の政治対立が、2020年になって大きなつけを払うことになったと考えると、少し暗い気分になる。
もっと具体的に分析した記事も探してみようと思う。