ヒルネクロコップの日記

ペルーに2年ほど住んでいたスペイン語学習者です。 読書や旅行の記録、ラテンアメリカのニュースについて書いていきたいと思います。2023年秋からメキシコに来ました。

ガルシア=マルケスの家に行ってきた ~『百年の孤独』がヒットして建てられた美しい家~

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今年はガブリエル・ガルシア=マルケスが何かと話題になる年だ。

3月には遺作となる『出会いはいつも八月』が出版され、今月末には満を持して『百年の孤独』の文庫版が日本で発売される。

そしてNETFLIX百年の孤独の映像化が進められていて、年末に公開されるという噂だ。

今年で没後10年ということで様々な企画が進んだのだろう。

 

そんな彼が亡くなるまで30年以上暮らした家がメキシコシティにある。

先日、その家を訪問する機会に恵まれた。

邸宅はメキシコシティの南部に位置し、メキシコオリンピックスタジアムのすぐ裏手、閑静な高級住宅街にある。

ガルシア=マルケスが住んでいた家

家を案内してくれたのは孫のエミリアさんだ(ガルシア=マルケスの次男ゴンサロさんの娘)。

女優としても活躍された方で、現在はこの家の管理をしつつ、こうして訪問客の対応やイベントの開催をされている。

ガルシア=マルケスの孫のエミリアさん

エミリアさんによると、この家は百年の孤独がヒットして得たお金で建てられたのだそうだ。

ガルシア=マルケスはコロンビア出身だが、1960年代からメキシコシティに住み、この街で百年の孤独(1967年)を書いた。

エミリアさんも正確なことはわからないらしいが、おそらくこの邸宅を建てたのは1981年のことだと思われる。

以降、2014年に亡くなるまでここで暮らし続けた。

ガルシア=マルケスの家の中庭

百年の孤独を執筆した当時の家は少し離れた別の場所にある。

※追記:『百年の孤独』を書いた家についても記事にしましたのでこちらからどうぞ。

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書斎

まず案内されたのが書斎。

大きな窓から太陽光が入るとても美しい部屋だ。

本棚には世界各国の文学作品、ガルシア=マルケス自身の著書の外国語への翻訳などが並べられている。

親交のあった田村さと子さんの本もあった。

本棚には他に、彼がノーベル文学賞を受賞したときの写真、そしてアルゼンチンの作家ルイス・ボルヘスの写真も飾られていた。

中でも1番目立つ位置に大きく掲げられていたのはチェ・ゲバラの写真だ。

彼に関する本も何冊か並べられている。

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ガルシア=マルケスフィデル・カストロの間には親交があり、キューバ革命を強く支持したことはよく知られている。

だがチェ・ゲバラとはどのような関係者だったのだろうか。

ラテンアメリカ研究者の太田昌国さんは以下のように書いている。

コロンビアのノーベル文学賞作家ガルシア=マルケスゲバラと同時代人で、生年も同じだ。

その代表作『百年の孤独』はゲバラが死んだ67年に公刊された。ゲバラの死を知ったマルケスは、明らかにゲバラへのオマージュとして、見事な短編「この世でいちばん美しい水死人」を書いた。その死は、立場を超えて、多くの人びとに悼まれた。

(太田昌国「チェ・ゲバラ没後40年」  現代企画室ウェブサイトより)

https://www.jca.apc.org/gendai/20-21/2007/guevara.html

 

執筆部屋

ガルシア=マルケスはこの部屋で多くの作品を生み出した。

朝食をとってから午後2時半くらいまで執筆。

昼食後は作品の推敲や、友人との会合に当てていたらしい。

机に置かれているマックのパソコンはある時期に執筆に使っていたものだそうだ。

他にも何台かパソコンがあったそうだが、他の手書き原稿などとともに、今は米テキサス大学オースティン校の「ハリー・ランサムセンター」という博物館に所蔵されているらしい。

(メキシコよりもアメリカの大学の方が保存・管理がちゃんとしているという理由で遺族が預けたとのこと…。)

執筆部屋は中庭の景色が太陽に映えて美しい
家族との時間

孫のエミリアさんは、午後によく本屋に一緒に出かけたり、カフェに行ったりアイスを食べたりしたのが美しい思い出として残っていると話してくれた。

家には、妻のメルセデスさんの銅像のほか、両親、子どもなど家族の写真が多く飾られていた。

メルセデスさんとのペアの銅像

子どもたちとの写真

両親の写真
思い出の人々の写真

家族の他にも、さまざまな大物と写った写真が並んでいた。

アメリカのクリントン大統領、オバマ大統領、国連のアナン事務総長など。

メキシコの大作家フアン・ルルフォと一緒の写真もあった。

米・クリントン大統領と

米・オバマ大統領と

国連・アナン事務総長と

フアン・ルルフォ(右)と
リビング

テキーラウイスキーが特に好きだったというガルシア=マルケス

このリビングに友人を招いてよくパーティーをしていたという。

リビングの隣にある食卓 訪問したときには黒猫がいた
晩年

ガルシア=マルケスは晩年、アルツハイマーを患った。

そんな中でも書き続けたのが、先日発売された『出会いはいつも八月』だ。

日本では「未完の作品」として紹介されているが、孫のエミリアさんは、 最後まで書き切ったあと推敲を少し残して亡くなってしまった、完成した作品だと思っていると話していた。

 

さらにエミリアさんが印象に残っているのが、ガルシア=マルケスは音楽を聞くのがとても好きで、アルツハイマーにもかかわらず最後の日々まで音楽のことは明晰に話していたことだという。

CDのコレクション
最期を迎えた部屋

ガルシア=マルケスはこの家を終の住処とし、2014年にここで亡くなった。

右手の建物の2階にあるのが彼の寝室で、妻のメルセデスさんに見守られながら静かに亡くなったという。

 

この家は、ガルシア=マルケスがどんな生活を送っていたかが肌で感じられる貴重な場所だ。

メキシコシティを訪れる文学好きにはぜひ訪問してほしい。

 

訪問するには

最寄り駅はメトロブス1号線のドクトル・ガルベス駅。徒歩だと25分、ウーバーだと10分ほど。

maps.app.goo.gl

インスタのこちらのアカウントから孫のエミリアさんに連絡をとり、訪問日時を予約。

英語・スペイン語可。一般500ペソ、学生350ペソ。

https://www.instagram.com/casagabrielgarciamarquez

 

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