ヒルネクロコップの日記

ペルーに2年ほど住んでいたスペイン語学習者です。 読書や旅行の記録、ラテンアメリカのニュースについて書いていきたいと思います。2023年秋からメキシコに来ました。

ペルーの抗議デモに参加し、催涙弾の中を必死で逃げた友達の話 <ペルー政変2020 ① >

11月はペルーにとって激動の月だった。

 

9日、国民から大きな支持を受けていたビスカラ大統領が国会によって罷免される。

10日、国会議長だったメリノ氏が大統領に就任。

12日、1回目の大規模な抗議デモ。

14日、2回目の大規模な抗議デモ。参加していた2人の若者が死亡。

15日、抗議を受けてメリノ大統領が辞任。

16日、サガスティ氏が新大統領に就任。

 

わずか1週間で2回も大統領が交代したのは、波乱が多いペルー政治の中でも、前代未聞のことだと思う。

それだけビスカラ元大統領の人気が高かったということだし、メリノ氏の正統性に疑問が多く、また抗議デモを弾圧しようとする姿勢が怒りを呼んだのだろう。

 

抗議デモのすぐ後、ペルー人の友達と連絡をとってみると、彼女も最初のデモに参加したという。

弟やいとこたちと8人でセントロ(リマ旧市街)まで行ったらしい。

どちらかというと穏やかで、それほど政治に熱を持っていなさそうな人だったので、ちょっとびっくりした。

 

その彼女が体験したデモ当日の話が、けっこうリアルで衝撃的だった。

セントロであった最初のデモに参加したよ。

参加者の大半は若者だった。

私たちは平和的なデモを望んでいたけど、警察の暴力のせいでそうならなかった。

午後10時、私たちが国家を歌っていたとき、警察がデモ参加者に向かって催涙弾を投げ始めた。

私の背中にも催涙弾が当たったけど、リュックが守ってくれた。

逃げようにも、催涙弾で喉も目も鼻もヒリヒリしてうまく走れなかった。

でも何区画も全力で走った。

いとこにも催涙弾が当たって転んだので、彼女の腕をつかんで急いで起こし、なんとか逃げた。

デモ隊にまぎれこんでいる私服警察が私たちを捕らえるんじゃないかと気が気じゃなかった。

警察はデモ隊に向かって散弾銃やガラス玉も発砲してた。

こんなに怖かったのは人生で初めて。

 

なんとも恐ろしく臨場感のある話だ。。幸い彼女たちに怪我がないようで本当によかった。

韓国映画「タクシー運転手」で、民主化デモを求める人々を軍が武力で鎮圧したシーンを思い出す。

 

そして、これが彼女から送られてきた動画のリンク。

「真ん中に映っているデモ参加者は、平和のしるしとして国旗を掲げたのに、警察は彼に向かって発砲した」とのこと。

www.youtube.com

 

結局、11月14日に行われた2回目の抗議デモでは、警察の発砲によって2人の若者が命を落としてしまった。そして翌日、メリノ氏は辞任に追い込まれた。

 

警察や軍が、権力者を守るために国民に銃を向けるというのは、ラテンアメリカの歴史ではよくあることだけれど、実際に目にしてみると不条理で悲しいことだ。

 

デモの日以来、体験を語ってくれた友達のWhatsAppのアイコンは、国会議事堂の前でペルー国旗を掲げて抗議する画像になっている。

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