ヒルネクロコップの日記

ペルーに2年半、メキシコに1年ほど住んでいたスペイン語学習者です。コロンビアやグアテマラにも滞在してました。 読書や旅行の記録、ラテンアメリカのニュースについて書いていきたいと思います。

伝説の「ハンモックの村」に行ってきた

今回の旅行でメリダ市(ユカタン州の州都)に行った理由の一つが、ハンモックで有名な村が近くにあることだった。

「ティシュココブ」、ハンモックの村。

8年くらい前に、職場の後輩から面白いからとプレゼントしてもらった本の中に登場した村で、ずっと頭の片隅にあったのだが、今回やっと訪れる機会を得た。

その本というのはラテンアメリカ文学者の旦敬介さんが書いた『旅立つ理由』という名前の本で、小説のような、自伝エッセイのような、世界各地の旅の記録のような不思議な本だった。

 

『旅立つ理由』の「ハンモックを吊る場所」という章に、主人公の「彼」がメリダ市の街中でハンモック職人に出会うシーンがある。

話を聞いてみると、名前はフアン・デ・ディオスといい、実は自宅の工房でハンモックを作っている職人で、自分で作ったものを週に二回だけ町で売り歩いているのだとわかった。(中略)

そこまで話を聞いて、彼は、もしかして、と思ってフアン・デ・ディオスに訪ねてみた――「その工房はどこにあるの?」

するとフアン・デ・ディオスは、こともなげに、「ティシュココブ」というマヤ語の地名で答えた。

ティシュココブ村というのはハンモックに関するどんな本にも名人たちの村としてかならず出てくる伝説的な地名だったから、その名を聞いて彼は一気に燃えあがった。

(旦敬介『旅立つ理由』80頁)

その後、主人公はハンモック職人に着いていって、村でハンモック作りを見せてもらい、ハンモックに関する様々な知識を得る。

 

いざハンモックの村へ

日本に帰国した今は手元にこの本があるが、メキシコには持って行っていなかった。

そのため昔読んだときの記憶を頼りに今年7月、メリダ市郊外のティシュココブ(Tixkokob)を訪ねた。

https://maps.app.goo.gl/LKCpczDqAeZMeuue7

👆メリダ→ティシュココブ行き バス乗り場はこちら

 

ローカルバスに乗って30分ほど。

人口わずか1万8000人の小さな町だ。

中心部こそ「町」という感じだが、少し歩くと「村」という表現が似合う。

ティシュココブのバス停留所

中心部の公園

ユカタン半島は高温多湿で、寝るときにはベッドではなく、涼しいハンモックで寝るという人も多い。

このティシュココブの村でも、ガレージや家の中に必ずといっていいほどハンモックを吊るための金具が付いている。

 

最初のハンモック店「ラ・ゴロンドリーナ

最初に訪ねたハンモック店は中心部の広場のすぐそば。

「ラ・ゴロンドリーナ(La Golondrina)」という名前の店だ。

https://maps.app.goo.gl/oSctaCvA95Xv5hwRA

店に入ると店主のおじいさんがハンモックに揺られて休憩している。

値段を聞くと、ブランコ型は350ペソ(約2600円)、寝そべる用は500ペソ(約3800円)だという。

や、やすい。

メリダ市内で売られているハンモックの半額くらい。

品ぞろえも豊富で、優良店だ。

僕はブランコ型が欲しくなったが、どれも木の棒とセットになっていて、飛行機で日本に持って帰るのは難しそうなので断念した。

 

2件目「エル・チャリート」

次の店。奥の方で店主を含め近所のおじさんたちがトランプに興じている。

ここも見るからに優良店だ。

https://maps.app.goo.gl/n6un5DfNiCTQsRZLA

店主に質問すると、手編みと機械製の違い、綿とナイロンの違いなど詳しく教えてくれた。

ハンモックは伝統的には綿で作られるが、湿気や汗を吸って重くなる、洗うのに手間がかかる、などのデメリットがあるそうだ。

最近では洗濯機で洗うことができるナイロン製が好まれるという。

品質はどうみても良いのだが、値段は安いものだと350〜400ペソ(3000円弱)くらい。

想像していたよりだいぶ安い。

この店では一緒に行った友達がハンモック素材のバッグを購入した。

 

3件目「フアン・デ・ディオス・プール」

最後に訪ねたのは、中心部から歩いて10分ほどの、ちょっと村のはずれにあるお店。

https://maps.app.goo.gl/EazxrQz5eouxBxbz7

その日はすでに閉店していたが、ノックしたら快く入れてくれた。

店をやっているのは60代の夫婦。

夫のフアン・デ・ディオスさんは18歳のときにハンモック職人になり、40年以上織り続けているという。

実際にどのように織るのかを夫婦で実演して見せてくれた。

とても複雑で見ただけでは糸の重なり方を理解できない。

その手さばきはあまりに速く、芸術的と言うしかない。

ブランコ型を織るのは2日、通常型を織るのは7日かかるという。

それなのに、値段はそれぞれ750ペソ(約6000円)、950ペソ(約7000円)だという。

こんなに安くて、どうやって生計を立てているんだろうか。。

 

ちなみに、このご夫妻も寝るときは毎日ハンモックで寝ているそうだ(ベッドは持っていない)。

この方が風が通って暑くないし、ハンモックにくるまれば蚊も寄ってこないし、利点が多いのだという。

 

フアン・デ・ディオスさんの店には、質の高いハンモックを求めてヨーロッパからも輸入業者が訪れてくるという。

ただ、最近はご病気を患い、満足な量のハンモックを生産できていないとのことだった。

 

僕は、丁寧に織り方を説明してくれたお礼も込めて、ブランコ型のハンモックを750ペソで購入した。

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まだハンモックを吊るす支柱を購入できていないので仮の姿


『旅立つ理由』を読み返してみると・・・

僕は10月に日本に帰国し、旦敬介さんの『旅立つ理由』を久々に再読することができた。

そして、読んでみてびっくり。

本に出てきたハンモック職人の名前をよく見ると「フアン・デ・ディオス」と書いてある…!

3件目に訪れたハンモック屋さんと同じ名前だ…!

柔和な雰囲気のそのハンモック売りは、マヤの遺跡に彫りつけられている神官の像にそっくりで、首がほとんどなくて鷲のような鼻をしている典型的なマヤ人だった。

旦敬介『旅立つ理由』80頁


もし著者の旦さんにお会いする機会があれば、同じ職人さんなのかどうか聞いてみたいものだ。

 

伝説のハンモックの村、ティシュココブ。

わずか一日の滞在だったが、印象的な旅だった。

メリダカンクンを訪れる方で、旅行の日程に余裕のある方は、ぜひこの村にも足を伸ばしてお気に入りのハンモックを探してみてください。

hirunecrocop.hateblo.jp