ヒルネクロコップの日記

ペルーに2年ほど住んでいたスペイン語学習者です。 読書や旅行の記録、ラテンアメリカのニュースについて書いていきたいと思います。2023年秋からメキシコに来ました。

知っておくと役立つ古代メキシコの神々10選(その1)

メキシコに来てから、大学の授業などで歴史の勉強をすることが生きる喜びになっている。

中でも古代メキシコ(スペイン征服以前)の世界観・宗教観について学ぶのは抜群に面白い。

神話も独創的で面白いし、何よりも神々の造形が魅力的だ。

古代の人々は本当にアートのセンスにあふれていて絵文書や彫刻を眺めているだけで一日が過ごせてしまう。

 

また古代メキシコの神々について学ぶのはとても役に立つ。

なぜなら現代のアート作品や壁画でも古代の神々が頻繁に登場するからだ。

基礎知識があるだけで「この神はこういう役割だからここに描かれているのか!」という発見があり、作品の理解がすごく深まる。

 

多様な民族の神々を統合したアステカ

古代メキシコといっても時代も地域も非常に多様な文明が栄えていたわけだが、一番良いのはアステカの神々について知ることだと思う。

14世紀~16世紀に栄えたアステカ文明は、周辺の民族を征服する過程で神々もまた統合していき、一つの神話体系を整備した。

そのためアステカの神話の中には過去の時代や別の地域の神々も織り込まれていて、それが非常に洗練された形で記録が残っている。

 

アステカで信仰されていた神々の数は100を超えると言われるが、ここでは基礎知識として知っておくと役に立つ重要な神々を10人紹介したいと思う。

「古代メキシコ展」の予習・復習用にもどうぞ。

 

①太陽神・軍神 ウィチロポチトリ(Huitzilopochtli)

画像:ナショナル・ジオグラフィックHPより
https://www.ngenespanol.com/historia/huitzilopochtli-el-dios-patrono-del-imperio-mas-poderoso-de-mesoamerica/

太陽神でもあり、軍神でもある。アステカ族の独自の神であり、彼らにとって最も重要な神。ウィチロポチトリの導きに従ってアステカ族はテノチティトラン(現在のメキシコシティー)を建造した。テンプロ・マヨール(大神殿)の最上位の神殿にまつられ、大量のいけにえを捧げられていた。人間の血が大好き。

 

②水の神 トラロック(Tláloc)

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水の神、雨の神。農業にとって重要な神。ウィチロポチトリと並び、テンプロ・マヨールの最も上の神殿にまつられていた。二重丸の目は「神聖な水」を表す。この目を見たらまずトラロックと思って間違いない。とにかく見た目がかわいい。もともとはテオティワカンにまつられていた神で、その後も時代・地域を問わず広く信仰された。古代メキシコ展では音声ガイドを務め、上白石萌音に解説する役目を担っている。

 

③大地の女神 コアトリクエ(Coatlicue)

大地の女神、豊穣の女神。太陽神ウィチロポチトリの母親。頭部は向かい合っているヘビの顔。肩やスカートも大量のヘビで構成されていて見た目が怖すぎる。1790年(スペイン植民地時代)にこのコアトリクエの巨像がソカロ(メキシコシティーの中央広場)で発見されしばらく大学に展示されていたが、この石像を拝みたいという人が後を絶たなかったため、スペイン人たちが邪教だとして再び地下に埋めてしまった。現在は国立人類学博物館のメインの展示の一つ。生で見るとその大きさと迫力にびびる。

 

④月の神 コヨルシャウキ(Coyolxauhqui)

月の神。大地の女神コアトリクエの娘で、太陽神ウィチロポチトリの姉。アステカの有名な神話では、彼女(コヨルシャウキ)が母(コアトリクエ)と弟(ウィチロポチトリ)を殺しに行こうとして、逆に返り討ちにあって殺される。そのため、常に首や手足がバラバラになった死体の姿で描かれる。アステカ人の世界観では、昼と夜が入れ替わるのは太陽神ウィチロポチトリと月神コヨルシャウキの殺し合いとして理解されていたと言われる。1978年にメキシコシティ中心部で巨大なコヨルシャウキの円盤が発掘され、そこからテンプロ・マヨールの発掘が本格的に始まった。テンプロ・マヨール博物館でこの円盤を見ることができる。迫力があって感動的。

 

⑤大地の神 トラルテクトリ(Tlaltecuhtli)

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大地の神。豊穣と畏怖の象徴。口から人間を食べ、下半身から人間を出産するモンスター。両ひじと両ひざには食べた人間のガイコツが付いている。南米アンデスの「パチャママ(母なる大地)」と立ち位置は似ているが、トラルテクトリは人間の血を欲しがり、いけにえを要求する神であった。2006年にテンプロ・マヨールの地下から長さ4メートルを超える巨大なレリーフが発見された。アステカの遺物の中では最も大きく、テンプロ・マヨール博物館のメインの展示。生で見ると圧倒される。

 

後半ではケツァルコアトル、テスカトリポカ、チャルチウトリクエ、シペ・トテック、ミクトランテクトリについて紹介します。

hirunecrocop.hateblo.jp

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