先月は、スペイン語の勉強と仕事の準備のためにグアテマラに滞在していた。
グアテマラは中南米の中でもかなり感染が落ち着いていて、すでに再開している語学学校もいくつかあるし、町を歩いていても観光客が少しずつ戻ってきている。
ある日、現地ガイドに案内されて首都グアテマラシティをドライブしていると、フロントガラスの向こうに空高く立ち昇る煙が見えてきた。
1ヶ月ほど前から噴火のニュースが伝えられている「パカヤ火山」だ。
グアテマラは環太平洋造山帯に位置している火山大国で、37の火山があるそうだ。
2018年には別の火山の大噴火があり、およそ300人が亡くなった。
ガイドが「いまはパカヤの噴火を近くで見られる絶好のタイミングだよ」と勧めてきたので、午後の予定を変えて、近くまで行ってみることにした。
グアテマラシティの中心部から1時間ほど車を走らせると、まだ午後4時前なのに急にあたりが暗くなってきた。
噴煙によって空が覆われているのだ。
さらに突然の激しい雨。
普段この季節に雨はほとんど降らないのだが、噴火による上昇気流によってこうした現象が起こるらしい。
到着したのは、パカヤ火山を含め5つの火山が見渡せる「エル・アマテ・キャンプ場 (Finca El Amate)」だ。
キャンプ場のほとんどの地面は、2010年にパカヤが噴火した際に固まった溶岩で埋め尽くされていて、その上を歩けるようになっている。
激しい雨も収まり、溶岩散策を楽しんでいたそのとき、突如大きな雷がパカヤ火山の頂に落ちた。
その瞬間、「ゴーーッ」という轟音とともに新たな巨大な噴火が始まった。
その時の様子がこの動画だ。
動画を見返すと、案内してくれたガイドが一番興奮している。
僕が「ここにいて危険はないのか」と聞くと、ガイドは「大丈夫、今日死んでも明日生き返るさ!」と適当なことを言っている。
彼のガイド人生の中でも、これほどの規模の噴火を間近で見たのは初めてだそうで、「これは宗教的な体験だ!」と感動が抑えきれない様子だった。
僕も目の前の光景の壮大さに心を打たれたが、さすがに恐くなってきて、10分ほどでこのキャンプ場から退却した。
後日談その1
翌日、新聞を買ってみると、噴火の記事が一面に載っていた。
噴煙は山頂から2400メートルも上に吹き上がり、周辺自治体が住民のために避難所を準備していると書いてある。
火山の周辺には、パイナップル栽培などで暮らす貧しい農家の家屋がたくさんあった。
彼らの生活は、灰の吸い込みによる健康被害もあるだろうし、常に噴火の恐怖が身近にあるはずで、その過酷さが想像される…。
後日談その2
噴火の翌々日には、火山灰が積もった影響で、グアテマラシティの国際空港が一時的に閉鎖されたというニュースが伝えられた。
人の手で滑走路のモップがけをやっている写真を見たが、めちゃくちゃ大変そうだ。。
グアテマラ唯一の国際空港、火山灰で閉鎖https://t.co/ngm3o22E2p
— AFPBB News (@afpbbcom) 2021年3月24日
民間航空当局トップは「風向きが南から北に変わり、パカヤ山の火山活動も活発になったことから、アウロラ国際空港に降灰があり、安全のため封鎖した」と明らかにした。
後日談その3
噴火から一週間後、たまたまパカヤ火山の上空を飛行機で飛ぶ機会があった。
夜だったので、赤く光る溶岩がはっきりと見えた。
ふらっと訪れたグアテマラシティで、偶然にも巨大な噴火と、その後の一連の影響を観察できたのは得難い経験だった。
グアテマラに滞在してみると、ここに住む人たちはまさに火山と隣り合わせで生活していることを実感する。