先月、ペルー全土を揺るがせた大統領罷免への抗議デモ。
14日に行われた2回目の大規模デモのさなか、二人の若者が警察によって殺害されるという悲劇が起きた。
犠牲となったのは、ブライアン・ピンタドさん (22) とインティ・ソテロさん (24)の二人だ。
BBCの記事によると、検死の結果、ブライアンさんは10発の散弾銃の弾を、頭蓋骨、顔、首、胸に受けていたという。
ペルー警察はゴム弾だと主張していたが、検死ではいずれも鉛の弾だったと判明したそうだ。
もう一人のインティさんは4発の銃弾を受け、そのうちの一つが心臓に命中していたという。
インティさんは観光ガイドとなるために、ツーリズムとホテル経営を学んでいたという。
当日は「9時までデモに参加してから帰ってくる」と家族に言い残していた。
兄と一緒に参加していたが、降り注ぐ催涙弾による混乱ではぐれてしまったそうだ。
一方のブライアンさんは弁護士を目指すために法学部に入っていたらしい。
数年前に経済的理由で学業を中断せざるを得なくなったが、家族によると正義感が強く、ペルー社会で横行する不正にいつも憤っていたそうだ。
3歳から母親がわりに彼を育ててきた祖母は「まだ孫が死んだとは信じられない」と語っている。
遺族の心情を思うとやりきれない。
殺人?過失?警察はなぜ発砲したのか
それにしても、たとえデモを沈静化させるためとはいえ、群衆に向かって鉛の実弾を発砲するものなのだろうか。
撃たれた方は死ぬかもしれないのに、どんな状況で発砲という判断にいたったのだろうか。
いろいろと疑問は尽きない。
ブライアンさんの弁護士は「警察の行為は殺人だった」と主張していて、警察の責任者の名前や、具体的な作戦の指示を明らかにするように求めている。
また検察は、メリノ前大統領や、前首相、前内務大臣に対して、過失致死罪の疑いで予備捜査を始めているという。
ペルーでは1980年〜2000年の内戦時代にも、軍や警察によって多くの無実の市民が殺された。
そして今なお責任者が罪に問われていなかったり、裁判が続いていたりするケースが山ほどある。
今回の二人の死は元には戻らないが、遺族のためにも、そしてペルー社会のためにもしっかりと調査と究明をしてほしいと思う。
民主主義を守ったペルーの「200周年世代」
今回の抗議デモには数万人が参加したそうだが、ほとんどが20代を中心とする若者だったそうだ。
ペルーは来年、独立から200年を迎えるので、彼らは「200周年世代」とも呼ばれているらしい。
ブライアンさんとインティさんはSNS上では「200周年世代の英雄」「民主主義の英雄」と呼ばれていて、リマでは二人を称えたこんな壁画も登場している。
ペルー人は他のラテンアメリカ諸国に比べると穏やかな性格の人が多いと言われることがある。
でも今回、若者たちがちゃんと声をあげ、国民を無視した権力者にNOをつきつけ、現実を大きく動かした。
民主主義が機能する様子を目の当たりにして、率直にすごいと感じる。
前回の記事では、実際に抗議デモに参加した友達のおそろしい体験について書いたので、合わせて読んでいただければうれしいです。